サンテラス光ヶ丘

マンションと共に生きる

全戸で異なる間取りと広いバルコニーが魅力の建築設計

[サンテラス光ヶ丘]

南側に向かって段々と張り出すように設計された、多彩な形状のバルコニーが印象的な[サンテラス
光ヶ丘]。物件名そのままに、陽の光を受けると建物の存在感がより際立ちます。
マンションの竣工は1979年。二葉山を背景に、由緒ある神社・仏閣・史跡が多く、広島駅からも徒歩
圏内と、環境と利便性を兼ね備える広島市東区の住宅地の一角に位置しています。広島駅北口側の開
発が進み、ますます住みやすさが増している注目度の高いエリアです。

新築時からこのマンションで暮らすYさん夫妻に、購入当時のことについて尋ねてみました。

「当時は呉市に住んでいて、仕事は広島まで通っていました。それで広島に住みたいと思って家を探していたとき、新聞1ページを使ってここのマンションの広告が出ていたんですね。すごくいいマンションだなと思って、まだ建設中だったけどとにかく見に行ってみようという話になって。実際に来てみると、広島駅から近いし、住宅地だし、神社とかもあるし、住みやすそうだなと感じました」。

スーパーや病院、学校、銀行などが近く、日々の生活に申し分ない環境がそろっているこの立地に、まずは魅力を感じたといいます。そしてもう一つ、広告を見たときに印象に残ったのはマンションの設計でした。

「一般的なマンションは長方形のような形をしているけど、ここはバルコニーが張り出していて、一つひとつ形と大きさが違っていたんですね。一戸ずつの間取りも違っていました。それがすごく魅力的で、当時はこういう建築のマンションは珍しかったですよ」。

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新築時のパンフレット

特徴的な外観デザインと、15戸15タイプ(販売時)の個性的な間取り。パンフレットに掲載されている「本格派マンションの提唱」「見直されるマンション」というキャッチコピーにまさしく表されるような、他とは一線を画す造りです。

「ここが気に入って、自分たちが買えるかどうかをすぐ調べました。当時は住宅購入の際には住宅金融公庫がつくことが多かったですが、このマンションは全戸についていなかったんですよ。だから他のマンションと比べて少し買いにくい面もありました」。

そうした点を承知のうえで、「『それでもこのマンションに暮らしたい』という人たちが、特に新築当時は多く住んでいたと思います」とYさんはいいます。

マンションへの愛着から、棟内で部屋の住み替えも

オリジナリティある建築設計が魅力の一つとなったこの[サンテラス光ヶ丘]。暮らし始めて40年以上が経つYさん夫妻にとって、このマンションの住み心地はどんな部分に感じているのでしょうか。

「まず一つは、日当たりが良いところ。これは100点満点ですよ」。

南面採光を十分に取り入れた間取りで、部屋には心地よく陽が届きます。バルコニー越しに見える、刻々と表情が移り変わる空や街並みなど美しい眺望を堪能できるのも魅力です。花を育てるのが趣味というYさんは、この広いバルコニーで色とりどりの花を日々楽しんでいるそうです。

そしてもう一つは、ほかの部屋からの音があまり聞こえないことだといいます。

「天井裏や床下のスペースを広く採ってあるようで、音が響きにくくなるんだと思います。全戸の間取りが違うからなのか、自分がリビングに居たとしても上下階からの音が気になりません。そういう部分も上手く考えて設計されているんだろうなと感じますね」。

たとえ小さなことであっても日々のこととなると、その良し悪しが住み心地に大きく影響してしまいます。集合住宅であればなおのことかもしれません。時代を超えても変わらない、居住者の暮らしを考えた本質的な設計が、ビンテージマンションにつながる重要な要素の一つになることが分かります。

当初、子供たちの砂場であった場所

住み心地の良いマンションなんです」と笑顔で話すYさん。現在は3階の部屋で暮らしていますが、実は購入時は別の階に住んでいたそうです。

「最初は2階の部屋でした。その部屋は今より間取りもバルコニーももっとコンパクトで、10年くらい暮らしたかな。その頃に、3階の部屋に住んでいた方が出られるという話を聞いて。バルコニーも広くなるしぜひそちらへ移りたいと思って交渉したんですよ。それで今この3階の部屋で暮らしていて、もう30年以上になりますね」。

一般的には、住居を変えるときには違うマンションや戸建てを選択することが多いもの。ですがこのマンションには、Yさん夫妻のように同じ棟内で部屋を住み替えることを希望し、実際に別の部屋へと居を移す人が多いのだといいます。

こちらは、4階の部屋からよりバルコニーが広い同4階の部屋へと住み替えたAさん邸のリビング。

部屋を移ってでも、ここで生活したい」。愛着の表れがしっかりと伝わってくる言葉。新築当時からこの部屋に住み続けているのは、今ではYさん夫妻のみとなりました。

一方で、少なからずデメリットもあるといいます。

「エレベーターがないところが欠点かな。若い頃は思わなかったけど、年を重ねるとともに『エレベーターがあれば』と少し思うようにはなりましたね」。

もちろんエレベーターはあれば便利で楽なものの、その分修理費や点検費といったメンテナンス費用の負担は増えてしまうもの。ただこの欠点は、元々三段の形状になった高低差のある土地と、その土地の北側と南側をそれぞれ走る道路などを考慮した建築設計でカバーしているのが面白いところです。

「このマンションは地下1階、地上5階からなっていて、南側の道路が地下1階と接していて、北側の道路が地上3階と接しています。入口が階層違いで2か所あって双方の入り口から階段で移動できるので、エレベーターがなくても何とかなっています。そうした面を考えても、それ以上にこのマンションが気に入っているんですよ」。

マンションの北側。車が縦列している辺りに地上3階部分のエントランスがあります。

住人による自主管理でマンション環境を維持

住人による自主管理でマンション環境を維持

竣工以来、住人を魅了し続けてきた[サンテラス光ヶ丘]。このマンションの管理は、新築時から一貫して住人による自主管理で行われているといいます。

「総会で一度、管理会社に任せたらどうかという意見も挙がったんですよ。でも任せるとなると費用面も含めてまた別の負担も出てくることが分かって、結果的に自主管理のままでやっています。基本は月1回の清掃で共用部分を掃き掃除したりしていますが、何かあればそのとき話すようにしているので、親睦会のような側面も兼ねているんですよ」。

Aさん邸のバルコニー

戸数が14戸と少ない分、月1回の清掃が住人のコミュニケーションの場にもなっているそうです。

「戸数の多いマンションだと隣に誰が住んでいるのか分からないっていう話をよく聞くけど、ここではそういうことは一切ないですよ。顔も分かるし、話もできますしね。ほかには、オーナーのみが集まって開かれる年1回の総会があります」。

14年に一度のペースで担う理事長の役割も、Yさん夫妻はすでに3回ほど経験しています。

「私が理事長をしたときは、初めてマンション保険に加入しました。総会で提議してみんなで相談して、加入しておいた方が良いということになったんですね。それ以降マンション保険はずっと継続しています」。

自身の任期以外でも、その年の理事長が総会で提議し、その都度管理規約の見直し&改善を重ねてきたといいます。大きかったものは、修繕積立金と管理費の設定についてです。

「最初は全戸均一の料金でしたが、途中で見直しの声が挙がりました。このマンションは各部屋で広さが異なることが特徴ではありますが、面積計算で管理されることが一般的なのに全ての部屋が同じ料金なのはどうかと。話し合いを経て、それ以降は面積計算で設定するようになりました」。

そしてもう一つ、ペットの飼育についても議題に挙がりました。

「長らく飼ってはいけないという規約になっていましたが、数年前に犬と猫はOKという形に変わりました。その当時の理事長が資料をきちんと揃えて説明してくださって、総会の場でも反対意見は一つもなかったですね。むしろ『私も飼いたかった』という声もあったくらいで。今は新築マンションでもペット可が増えているくらいだし、これは良かったんじゃないかと思います」。

そのほかには、バルコニーの防水工事をはじめとした大規模修繕工事を10年に一度のペースで行い、しっかりとしたメンテナンスを重ねながらマンションを維持管理しています。

築年数を経るたびに魅力を増すビンテージマンション。そこには、建物のメンテナンスに対する住人の高い意識と、時間とがかけ合わさってこそ生み出される唯一無二の価値があります。

「このマンションには、ここならではの魅力を持ったままこれから先も生き続けてほしいですね。私たちもずっとここで生きていきたいと思っています」。

マンションは、ただの“生活の場”なのではなく、人生とともに生きるもの。Yさん夫妻の言葉から、そんなメッセージを受け取った気がします。

物件概要

物件名/サンテラス光ヶ丘

所在地/広島市東区

竣工年/1979年

戸数/14戸