Interview
取材・編集 広島蔦屋書店
赤木 伸
ヨーロッパやアメリカ東海岸では築100年、200年のマンションは珍しくない。日本でも、価値あるものを後世に残すのが自分の使命と、ビンテージマンションに特化した不動産業「広島ビンテージマンション」の活動をする赤木伸さんに話を聞いた。
「広島ビンテージマンション」を始めたきっかけですか?もともと古い物に対する興味はあり、ヴィンテージ家具や雑貨を海外から集めて販売をしていました。祖父が工務店を経営していて「この建物はわしが建てたんよ」と良く言っており、小さい頃から建築は好きでした。学生の頃、将来のことで悩んでいた時に海外や東京のマンションを特集した本を見て、古いマンションってかっこいいな。くらいの感覚から始まったんですが凝り性なもので。どんどん勉強していくとマンションの奥深さに感動して、この価値観をみなさんに伝えたいと思い「広島ビンテージマンション」を立ち上げました。
僕はビンテージマンションを築10年以上のマンションと定義していましていますが、ただそれだけではなく、立地と管理が良いものを厳選して「広島ビンテージマンション」で取り扱っっています。ビンテージマンションの魅力は色々とありますが、立地が良い物が多いのはそのひとつです。いわゆる花見の関取合戦と同じで、良い場所を先に押さえてるケースがあります。見晴らしの良い場所やリバーサイドだったり、角地にあったり。日本ってもともと戸建志向が強くて、マンションを買うっていうのは、30年以上前は、それほど一般的では無かったんですね。だからこそ、マンションに住むことって楽しいんだっていう演出がされていることも多いです。建材とか、建物の形とか、間取りが変わってるとか、マンションに住むのって楽しいですよっていう工夫がすごくされています。あとは金額面で少し割安だっていうところもあります。
でも一番の魅力は「管理とメンテナンス」なんですよ。マンションを買ったら、賃貸と違って、管理費と修繕積立金というものが発生します。管理費は毎月の管理会社への委託費用です。それよりも修繕積立金というのが大事で、その修繕積立金が溜まっているマンションと溜まっていないマンションがあるんです。それが、築年数が経てば経つほどはっきりしてきます。マンションを買う際の信頼性の判断基準にもなります。新築ではそれは分かりにくく、築年数の古いマンションの方が安心して住むことができるかどうかの判断基準があるんですよ。
じゃあ、その修繕積立金の違いが、なんで生まれるのか。という話なんですけど、マンションの住民の方々で作っている管理組合の「意識の差」です。管理組合が管理会社にマンションの管理を委託する訳ですが、あくまでも管理会社は雇われているだけなので、雇い主も積極的に関われているかが重要です。一方で残念な所もあります。立地もデザインもいい、でも管理ができていない。というようなマンションもあるんですよ。そうなってくると建物の資産価値も下がってしまうこともあります。もしその場合、売るとなると売りづらい。という結果になりかねません。
ビンテージマンションが、色々な事情があって売りに出されるっていうことがあるんです。でも買う人が「立地がいいから」とマンションの機能だけ見て買うと、管理に積極的に関わらない。という事も起きてくるのではないかと思います。そうなってくるとせっかく続いてきた素晴らしいマンションがなくなってしまう。僕が窓口になって取り扱うことによって、ビンテージマンションという価値を理解して、建物自体に愛着を感じる人が買ってくれたら、そのマンションは100年続くビンテージマンションになるんじゃないかな、って思っています。